ウォルター・クレイン Walter Crane
(1845ー1915)

 ウォルター・クレインは最も初期のカラーピクチャーブックの成功者として、またチルドレンブックの発展において、価値のある役割を担っています。そして、見開き頁を一つの作品として制作した初めてのアーティストです。

 彼は英国リバプールに1845年8月15日、肖像画家トーマス・クレインの息子として生まれました。14歳のときにはテニーソンのレディー・オブ・シャロット(Lady of Shalott)でいくつかのカラー頁を描き、彼のその後の片鱗を見せています。
 ラファエル前派の影響やジョン・ラスキンの教えにより、ロセッティが好んだエングレーバーのウィリアム・ジェームス・リントンの工房で働き始めます。リントンの工房で、ラファエル前派のミレーやロセッティなど当時活躍中の作家の作品に触れることにより、それらを学習する十分なチャンスを得ます。
 1865年、多色刷り出版のエドモンド・エヴァンスと新しい出版のフレドリック・ワルンために6ペンス・ナーサリーライムスのイラストを描き始めます。それらの出版物は、彼の評判をチルドレンブックの第一人者として高めることになりました。
 また彼はその作品で絵だけでなく、文字・楽譜のデザインなどこの本のすべてをデザインしたことでも有名です。細部にわたって、アールヌーボー調の彼のアートが反映されています。
 その後の彼の活動はチルドレンブックの分野のみに留まらず、ウィリアム・モリス(現在でも彼のデザインした図柄が英国デパート・リバティーの製品として数多く残っています)との共同文化事業などにまで及びました。面白い逸話としては、ウィリアム・モリスが美術本を制作するとき、アーティストとしてウォルター・クレインと若きオーブリー・ビアズリーの2人が最有力候補に挙がったとき、モリスは即座にウォルター・クレインを選んだということです。

 1915年、クレインは70歳でその生涯を閉じました。




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